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日銀は5月に追加利上げも、米関税の影響限定的なら-安達前審議委員

更新日時
  • 基調物価は着実に上昇、順調に進めば年末までに再利上げあり得る
  • 米関税措置で物価・賃金に影響なら、利上げ路線が停止のリスクも
前日銀審議委員の安達誠司氏
前日銀審議委員の安達誠司氏 Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg

前日本銀行審議委員の安達誠司氏は、基調的物価の着実な上昇を踏まえると、米関税政策によって日本経済や金融市場に大きな影響が生じなければ、次回5月の日銀金融政策決定会合での追加利上げもあり得るとの見解を示した。

  3月25日に退任した安達氏は2日のインタビューで、日銀3月短観で企業の物価見通しが上方修正されるなど、日銀が重視する基調的物価は1月利上げ以降も一段と上昇していると説明。「利上げに向けた環境は整ってきている」とし、仮に審議委員として5月1日の会合に出席し、利上げ提案があれば「賛成する状況だ」と語った。

  安達氏は足元の基調的な物価上昇率を1.75%程度と試算し、順調に進めば年末か今年度末には目標の2%に達するとみる。日銀の利上げは5-7月と9-12月に1回ずつをベースシナリオとしつつ、現状は「0.75%への利上げのリスクは大きくないが、1%への道は開けていない」と指摘。1%への利上げ局面では現行の緩和スタンスの変更が必要になるとみる。

  日銀が1月に政策金利を17年ぶりの0.5%程度に引き上げて以降も、賃金・物価動向に関するデータは堅調に推移している。一方で、トランプ米政権の関税政策を巡って先行きの不確実性が増しており、次の利上げ時期に関する市場の見方は割れている。安達氏が今回示した見解は市場の想定よりもタカ派的と言える。

  ブルームバーグが政策金利の維持を決めた3月会合前に実施したエコノミスト調査では、次の利上げ時期は7月が48%と最多だった。次いで6月が15%、5月と9月が13%となり、一部に予想を前倒しする動きが見られた。

不確実性続く

  一方、安達氏は、不確実性が完全になくなることはないとも指摘。米関税政策を受けて企業が設備投資を抑制するなど、実体経済の下振れリスクが顕在化して来年の賃上げや基調的物価に影響するような事態になれば、「利上げ路線をいったん停止する必要が出てくる可能性もある」という。

  トランプ大統領は日本時間3日早朝に、貿易相手国に対する相互関税など新たな関税措置を発表する予定だ。関税は即時発動される見通し。これとは別に、米国が輸入する自動車に25%の追加関税を課す措置が同日午後に適用される。

  植田和男総裁は2日の国会答弁で、米関税政策の世界経済への影響については不確実性が高いとした上で、関税の範囲や規模次第では各国の貿易活動に大きな影響が及ぶ可能性があるとの見解を示した。

  日銀は5月会合で、見通し期間を2027年度まで1年延長した新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)を議論する。足元の消費者物価は前回1月の見通しから既に上振れていると安達氏は指摘。27年度の見通しは2%程度になることが見込まれ、物価安定目標に着地していくような情報発信が行われる可能性があるとみる。

  安達氏は大胆な金融緩和によって経済成長と緩やかなインフレを目指すリフレ派の論客として、安倍晋三政権の指名を受けて20年3月に日銀審議委員に就任。植田総裁は24年3月に、黒田東彦前総裁が進めた大規模緩和から転換し、これまでに3回の利上げを実施した。植田体制以降も、安達氏は全ての会合で賛成票を投じた。

  利上げに賛成した理由については、デフレではない状況が実現していく中、出口の際は、物価目標が実現する前の段階から、緩和的スタンスを維持しつつ、緩やかに利上げを進めていくことが肝要と考えたと安達氏は説明。それが実際の政策として執行部から示されたため、急激な利上げはしないことを前提に賛同したという。

(最終段落に安達氏の発言を追加して更新しました)
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