イスラエルとイランの衝突、沈静化の兆し見えず-戦争拡大懸念高まる
Galit Altstein、Dan Williams、Jonathan Tirone-
イランは無人機やミサイルを複数回発射-イスラエルもテヘラン攻撃
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市場に影響、サウジやエジプトの株式下落-イスラエル株は上昇

Damage to a building hit by a ballistic missile launched from Iran in Bat Yam, Israel, June 15, 2025.
Photographer: Kobi Wolf/Bloombergイスラエル、イラン間の武力衝突が開始されてから4日目となる16日、事態は沈静化の兆しを見せず、中東の産油地域における戦争拡大への懸念が高まっている。
イランは過去24時間にわたり複数回にわたってドローン(無人機)とミサイルを発射。一方、イスラエルはイランの首都テヘランを攻撃し、主要な軍幹部を新たに殺害した。
イラン政府によると、13日以降、イラン国内での死者数は224人に上り、その多くが民間人だと主張。イスラエルの救急サービスによれば、イランによる攻撃で14人が死亡し、約400人が負傷した。

両国による報復の応酬は金融市場にも影響を及ぼしている。15日にはサウジアラビア、エジプト、カタールの株式相場が下落。エジプト・ポンドは対ドルで約1.8%下落し、1ドル=50ポンド台に下げた。一方、イスラエルの株式相場は防衛関連銘柄がけん引し上昇した。
16日のアジア市場でも投資家の懸念が広がったが、エネルギー以外の値動きは比較的落ち着いていた。
北海ブレント先物は16日のアジア時間に一時5.5%上昇。その後は上げ幅を幾分縮小した。米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は74ドル近辺で推移した。アジア株式は緊迫した中東情勢よりも国内要因が意識され上昇した。
今後の大きな焦点は、イラン攻撃への関与を否定してきた米国がフォルドゥのウラン濃縮施設の破壊などに参加するかどうかだ。専門家は、イスラエル単独の戦力では実行できないと指摘してきた。
トランプ米大統領は15日、ABCニュースとのインタビューで、イスラエルとイランの衝突に「われわれが関与する可能性はある」と述べた。ただ、直ちに行動を取る意向は示さなかった。トランプ氏は米国の軍事介入の回避を選挙公約の一つにしていた。共和党内の一部からは、イランの攻撃によって米国の利益が損なわれれば介入が正当化され得ると指摘する声が上がっている。
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イスラエルのネタニヤフ首相はFOXニュースとのインタビューで、米国に対して大型貫通爆弾の供与を要請したかとの質問に明言を避けたが、「他にも計画があり、多くの切り札を持っている」と述べ、必ずしも米国の直接支援を必要としないと示唆した。
その上でネタニヤフ氏は「われわれはこの脅威を取り除くと断固決意している。イランの能力を破壊した時に戦いは終わる。われわれは必ずそれを成し遂げる」と語った。
一方、イランは15日、イスラエルに対して高度な兵器はまだ使用していないと主張した。イランのファルス通信が報じた。
米政府高官によると、トランプ氏はイランの最高指導者ハメネイ師を殺害しようとするイスラエルの計画に反対した。トランプ氏のこの動きについては、ロイター通信が先に報じていた。
イスラエルのカッツ国防相は「ターゲットは今やテヘランの体制そのものだ」と述べた。ネタニヤフ氏もイラン国民に対し、指導者を打倒するよう呼びかけている。ただ、イスラエル当局者は体制転覆が攻撃の目的ではないとしている。
存亡かけた戦い

ネタニヤフ氏は15日、ミサイル攻撃を受けたテルアビブ近郊バトヤムを視察。「我々は国家の存亡をかけた戦いにある」とし、「市民、女性や子どもを意図的に殺害したイランには、極めて重い代償を支払わせる」と語った。
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トランプ氏は15日、イランとイスラエルは「合意すべきであり、合意に至るだろう」とソーシャルメディアに投稿。「イスラエルとイランの間にまもなく平和が訪れる!」とし、「多くの協議が現在進行中だ」と明らかにした。
その後、記者団に対しては「時として彼らはとことん戦い続けざるを得ない」と述べた。
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国際原子力機関(IAEA)は、イラン中部イスファハンにあるウラン転換施設が複数回の攻撃を受け、深刻な損傷が生じたと報告した。
イランのガリババディ外務次官は国営テレビでIAEAに言及し、「これまでのような協力は今後行わない」と述べた。
ファルス通信によれば、同国議会の主要委員会は、核拡散防止条約(NPT)をこれ以上順守すべきではないとの見解を示した。同条約は締約国に対し、IAEAによる査察の受け入れを義務づけている。
イラン政府が実際にこうした措置に踏み切るかどうかは現時点で明らかになっていない。
過去最悪の衝突
イスラエルとイランの敵対関係は、13日にイスラエルがイランの核関連施設や軍事施設を空爆したことで、これまでで最も深刻な衝突へと発展した。イスラエルはイランの防空網への攻撃により、首都テヘランを含む広範な地域で制空権を掌握したとみられる。
両国の軍事衝突は世界の金融市場を揺るがし、13日には原油相場が7%急伸、安全資産への需要で金相場は大幅に上昇した。先進国株で構成されるMSCIワールド指数は4月以来の大幅安を記録した。
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イスラエル軍は15日、イランの武器製造拠点の周辺に住む市民に対し、「直ちに退避する」よう勧告した。
イランは国家の威信と存立に関わる深刻なジレンマに直面している。弱腰と受け取られる対応は避けたい一方で、取れる選択肢は限られつつある。レバノンのヒズボラなどイランが支援する武装勢力は、イスラエルによる過去1年にわたる攻撃で戦力の大幅な低下を強いられている。
イランは15日、イスラエル北部ハイファ周辺のインフラ施設やエネルギー関連施設を標的に攻撃を行った。イスラエル当局は、イランから飛来するミサイルの迎撃を進める中、住民に対して一時的に防空壕にとどまるよう勧告した。
ネタニヤフ氏は、「イランの宗教指導体制のあらゆる施設、あらゆる標的を攻撃する」と表明。一方、イランの最高指導者ハメネイ師は「イスラエルの方から戦争を仕掛けてきたのだ。この重大な罪を犯したイスラエルを無傷では終わらせない」と警告している。

イランのジレンマ
戦闘の激化を受け、イランは15日にオマーンで予定されていた米国との核協議を中止。一方でトランプ氏は、米国はイスラエルの攻撃に関与していないと改めて強調し、イランとの核合意を成立させることはなお可能だとの認識を示した。
中東地域の政治指導者やロシアのプーチン大統領は、今回の紛争が制御不能な事態に陥ることへの懸念を強めており、イスラエルとイランの双方に対して早急な沈静化を求めている。
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戦闘がさらに拡大し、特に米国の軍事施設や外交拠点が攻撃対象となれば、イラン指導部にとっては国内での政治的支持を高める契機となる可能性がある。ただ同時に、それはイランが直面するリスクを著しく高めることにもつながる。
世界の原油輸送量の約5分の1を占めるホルムズ海峡において、イランがタンカー攻撃といった手段を検討しているかどうかは明らかになっていない。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナリストによれば、そうした行動は世界最強の軍事力を持つ米国を紛争に巻き込む可能性があり、イランはその代償の大きさを踏まえて回避を判断しているとみられる。そうした姿勢の背景には国内経済の弱さもありそうだ。イランのインフレ率は約40%に達しており、政府に対する国民の不満も高まっている。
原題:Israel-Iran Attacks Extend to Fourth Day With No Deal in Sight、Israel-Iran Strikes Escalate, Deepening Wider Conflict Fears (1)、Israel-Iran Strikes Escalate, Deepening Fears of Wider Conflict(抜粋)