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アクティビストの株主提案は過去最多、今は昔の「シャンシャン総会」

  • 三菱UFJ信託調べで137議案、内容多様化し真の改革迫る動きも
  • 持ち合い株主が減少、経営トップ選任議案の賛成率にも大きな影響

かつて形式的な進行から「シャンシャン総会」と呼ばれた日本企業の株主総会ががらりと変わってきた。今年はアクティビスト(物言う株主)による株主提案が過去最多となり、経営陣への監視や要求は一段と厳しくなっている。

  三菱UFJ信託銀行の集計では、アクティビストによる今年の株主提案は137議案。取締役会の構成変更や非公開化に関する要求など、企業の課題により深く踏み込み、幅広い変革を求めるものが増えている。

  踏み込んだ株主提案の増加は、経営陣に対して自社株買いや増配といった目先の株価対応にとどまらず、成長戦略の具体化を求める圧力が強まっていることを示唆する。株主総会を通じて日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)改善が意識されれば、米国との通商交渉や企業業績の先行き不透明感が強い日本株市場にとって明るい材料となる。

  MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストは、アクティビストによる保有が日々明らかになる中、企業側もガバナンスや資本効率を気にかけていると指摘。自社もターゲットになり得るとの「危機感がある」と話す。

  株主総会は来週ピークを迎え、1700社以上が一斉に開く見通しだ。三菱UFJ信託によると、全株主による今年の提案数は398件。10年前の2倍以上に増えた。

  米ダルトン・ インベストメンツ系のニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドはフジ・メディア・ホールディングスに対して取締役候補を提案。ストラテジックキャピタルは日産自動車に上場子会社の日産車体を完全子会社化することを要求している。

注目の議案

投資家 企業提案内容株主総会の開催日
シティインデックスイレブンス日本農薬少数株主を保護し、株主価値向上策について検討するための特別委員会の設置6月18日
オアシスジャパン・ストラテジック・ファンド太陽ホールディングス佐藤英志取締役と高野聖史取締役の解任6月21日
ストラテジックキャピタル日産自動車日産が保有する上場関係会社株に対する対応方針の検討・開示6月24日
ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドフジ・メディア・ホールディングス監査等委員でない取締役候補を提案6月25日
ファラロン・キャピタル・マネジメントT&Dホールディングス社外取締役2人の選任と社外取締役比率の過半への引き上げ6月26日

  こうした日本市場の動向は、トランプ政権下で反ESG(環境・社会・企業統治)が進む米国とは対照的だ。ISSコーポレートのリポートによると、ラッセル3000種指数の構成企業に対して今年提出された議案の数は5月13日時点で782と、前年の1-6月と比べて約14%少ない。

  三菱UFJ信託の下田紘郎上級調査役は、昨年度に日本株がボックス圏で推移したことがアクティビストによる株主提案増加の要因だと分析する。アクティビストが自らの投資家に活動内容をアピールするため、提案を活発化した可能性があると述べた。

関連記事:アクティビストの日本株投資が4年ぶり最高、自社株買いに次ぐ存在感

  M&Gインベストメンツのアジア太平洋地域株式運用責任者であるカール・バイン氏は、「投票は年に1回のため重要で、社長や会長に反対票を投じることは他の文化圏よりもかなり明確なメッセージになる」と話す。同社はトヨタ自動車セブン&アイ・ホールディングスなどの株式を保有している。

高まる機関投資家の影響力

  アクティビストに加え国内の機関投資家も議決権行使基準を厳格化させている。顧客である受益者の利益を守るため、投資先と対話し、企業価値の向上を図るスチュワードシップ責任を果たす必要性が高まっているためだ。大和総研によると、主要500社のうち24年に経営トップへの賛成率が80%未満だったのは11%と、19年の8.7%から増えた。

  ゴールドマン・サックス証券チーフ日本株ストラテジストのブルース・カーク氏は、「従来は株主名簿上に多くの持ち合い株主が存在することで、一定の支持を得られる状態だったが、今はその支持が減少しつつある」と話す。経営トップ選任議案の賛成率が50%を下回る企業が出てくれば、日本の企業統治改革の大きな転換点となるとみる。

  今は国内投資家の保守的な姿勢が依然として強く、アクティビストによる株主提案が可決されることはまれだ。ただ今後、安定株主の減少が進む中で機関投資家の存在感が増し、議決権行使基準が一段と厳しくなれば、経営陣は賛成票を確保するのが一層難しくなる可能性が高い。

  大和総研コーポレート・アドバイザリー部の吉川英徳主任コンサルタントは、日本企業の株主総会は従来の「予定調和的」なものではなくなったと指摘。最近は株主提案や機関投資家による反対票によって展開が読みづらく、「終わってみないと分からない」と述べた。

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