トランプ氏、イランの体制転換に言及-イスラエル首相は攻撃継続明言
Jennifer A Dlouhy、Akayla Gardner、Arsalan Shahla-
現体制がイランを偉大にできないなら、なぜ変えない?-トランプ氏
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米軍攻撃でイラン核施設に甚大な損害、全容まだ不明-ネタニヤフ氏
トランプ大統領は22日、自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、現体制がイランを再び偉大にすることができないのであれば、なぜ体制転換が起こらないのだろうかと問いかけた。
別の投稿では、イランの核施設に対する被害は甚大で、攻撃は強力かつ正確だったと指摘した。一方、イラン最高指導者の首席顧問は濃縮物質はなお「残っている」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は、米軍によるイラン核施設への攻撃が「甚大な損害を与えた」と述べたが、その被害の全容はまだ明らかになっていないとした。
イスラエル軍は米軍による空爆後も独自の攻撃を継続。ネタニヤフ氏は記者会見で、イランおよびパレスチナ自治区ガザへの軍事作戦を継続する方針を明言した。
おとり作戦
これに先立ち、ヘグセス米国防長官は22日午前、イラン核施設への攻撃について記者会見を開き、潜水艦からの巡航ミサイル「トマホーク」発射に加え、ステルス爆撃機B2によって14発の「バンカーバスター(地中貫通爆弾、MOP)」を投下したと明らかにした。
会見に同席したケイン統合参謀本部議長によると、「ミッドナイト・ハンマー」と称された今回の作戦では、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地からB2爆撃機が出撃。米軍が攻撃を受けたとの報告はないと述べた。またケイン氏は被害評価には時間を要するが、「3施設いずれも極めて深刻な損壊・破壊を受けた」と述べた。
37時間にわたった今回の作戦で中核を成すのは、陽動作戦として一部のB2爆撃機編隊が西方へ飛行し、戦術的な奇襲効果を維持するためのおとりとして機能したことだ。こちらのB2爆撃機については、飛行追跡データを基に、イランに対して核開発計画を巡る交渉を迫るための圧力手段として展開されているとの見方が報じられていた。
同時に、バンカーバスターを搭載した別のB2編隊が東方へ向けて飛行した。当局者によると、作戦には数十機の空中給油機、誘導ミサイル搭載型潜水艦、第4世代および第5世代の戦闘機も参加した。
米国防総省は今回の作戦について成功したと評価している。米当局者によれば、作戦中に米兵の死傷者は出ておらず、イラン側から米軍の装備に対する攻撃も確認されていない。
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トランプ氏はまた、共和党議員に対して大型減税延長法案の可決に注力するよう、ソーシャルメディアへの投稿で呼びかけた。トランプ氏は7月4日までの可決を求めている。
「あらゆる選択肢を留保」
イランは米軍による核施設攻撃を受けて重大な結果を招くと警告し、「あらゆる選択肢を留保する」と表明した。ただ、これまでのところは抑制的な反応にとどまっている。
イランのアラグチ外相は米国の行動について、「暴挙であり、永続的な影響を招く」とソーシャルメディア、X(旧ツイッター)に投稿。「すべての国連加盟国は、この極めて危険かつ違法な犯罪行為に強い警戒を示すべきだ」と述べた上で、「イランは主権、国益、国民を守るため、あらゆる選択肢を保持する」と強調した。
イラン政府高官が米国の攻撃について見解を示すのは外相の発言が初めて。ただ、声明では米国資産に対する直接的な報復措置や具体的な行動方針には触れていない。
国連安保理が会合
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は同日開催された国連安全保障理事会の会合で、外交への回帰を呼びかけた。核拡散防止の国際的枠組みが「危機に瀕している」との認識を表明。IAEA査察官の監視活動を再開するには敵対行為の停止と交渉の再開が不可欠だと訴えた。同日中に理事会の特別会合を開催するとしている。
イランと話す用意
ヘグセス氏は、今回の作戦はイランの核開発計画の破壊に焦点を当てたものであり、イランの政権転覆を狙ったものではないと指摘。「この作戦は政権交代を目的としたものではなく、これまでもそのような意図はなかった」と述べた。
一方で、ルビオ国務長官は、イランが核兵器開発の野望を明確に放棄する必要があるとの考えを表明した。
「イランが核兵器保有国になることに固執すれば、同国の政権自体を危機にさらすことになる」とFOXニュースで発言。「イランがその道を進もうとするなら、それは政権の終焉(しゅうえん)につながるだろう」と警告した。
またCBSのインタビューでは、イランと話す用意があると指摘。現時点でイランに対する軍事作戦は計画されていないとも述べた。
バンス副大統領はNBCの番組で、被害評価はなお進行中であるものの、米軍の空爆によりイランの「核兵器開発を大幅に遅らせた」と確信しており、「それが今回の攻撃の目的だった」と述べた。
その上で「イランが核兵器を開発できるようになるまでには、今後何年もかかるだろう」との見方を示した。
米国の攻撃により、核に関するイランの能力のうち、既に知られている分については大きく損なわれた可能性がある。だが同時に、核に関してイランのどこに何が残されているのかを把握するという極めて困難な新たな課題も生んだ。
イランの核計画を詳しく知る関係者3人によれば、今回の軍事作戦は迅速に成果をもたらしたというより、ウランの所在確認やイランによる核兵器製造を阻止するといった作業を一層複雑なものにした。
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イランのエテマド紙によると、同国議会は核拡散防止条約(NPT)脱退を審議している。
米主要都市は警備強化
米国の主要都市では、トランプ大統領がイラン核施設攻撃に踏み切ったことを受けて、一斉に警備が強化された。イランによる報復への懸念が強まっている。
ニューヨーク、首都ワシントン、ロサンゼルスの警察当局は、宗教施設や外交施設、公共スペースでの巡回を強化。当局は現時点で信頼性のある脅威は確認されていないと述べつつも、警戒する必要性を強調した。ニューヨーク大都市圏には、イスラエル国外で最大規模となるユダヤ系住民が暮らしている。
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一方、英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とシンガポール航空は、ペルシャ湾地域に向けた運航を一時停止した。米国がイラン核施設攻撃し、イランが報復を宣言したことを受け、中東路線に混乱が広がっている。
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原題:US Attack Against Iran Hinged on Misdirection and Decoys (2)、Iran Says ‘All Options’ Open After US Strikes Atomic Sites (1)、Netanyahu Says Iran Nuclear Site Damaged as Full Results Unknown(抜粋)