メルツ氏、ドイツ新首相に-議会投票初回で過半数得られず再投票で
Arne Delfs-
初回投票で過半数割れは第2次大戦後初-求心力に懸念も
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長引く景気後退、ウクライナ侵攻、極右の台頭-内外で課題山積
ドイツ連邦議会(下院)は6日、メルツ・キリスト教民主同盟 (CDU)党首を首相に選出した。メルツ氏は欧州最大の経済大国を率いることになるが、1回目の投票では過半数を得られず、求心力に疑問が残る結果となった。
6日午後に行われた2回目の投票で、メルツ氏は630議席中325票を獲得した。1回目の投票は、連立与党のキリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU)と社会民主党(SPD)で合計328議席を持つにもかかわらず、得票数は310票にとどまった。
新首相候補が最初の投票で議会の支持を得られなかったのは、第2次世界大戦後初めてで、ドイツ政界には動揺が広がった。

その後、メルツ氏はシュタインマイヤー大統領から正式に首相に任命された。連邦議会議長の前での宣誓を経て、ショルツ前首相との引継ぎを行う。
同氏は7日、首相として初めて海外訪問し、パリでマクロン仏大統領と会談した後、ワルシャワでトゥスク・ポーランド首相と会談する予定だ。

メルツ氏は、難しい局面で国政のかじ取りを担うことになる。ドイツは景気後退局面に入ってから2年が過ぎ、引き続き経済は停滞している。ロシアによるウクライナ侵攻で激しい戦闘が続いており、ドイツ東部の旧共産圏地域では、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が支持を拡大している。
だが、初回投票での想定外の事態は、すでに支持率低迷に苦しむメルツ氏にとっては大きな痛手で、政府業務を主導する能力に支障が出るとの懸念が膨らみつつある。
ベルリンの公共政策大学院ヘルティースクールのアンドレア・レームレ教授(政治コミュニケーション学)は、メルツ氏が「両目にあざ、足下はふらついた状態」で政権をスタートしたと表現した。同氏は公共放送ARDで「メルツ氏が非常に動揺していたのは明らかで。連立内で自らの多数派を維持するための闘いを強いられるだろう」と指摘した。
メルツ氏が3月、SPDや緑の党と連携し、5000億ユーロ(約81兆円)のインフラ投資基金を設立する支持を取り付けたことは、政権にプラスに働きそうだ。これにより同氏は、国内の高速道路、鉄道網、橋など、切実に必要とされるインフラ投資を直ちに拡大する権限を得ている。
首相就任は、メルツ氏の数十年にわたる野望でもあった。同氏は、メルケル元首相との対立から2009-21年に政治活動を中断していた。復帰後、2度のCDU党首選での敗北を経て、21年末にようやく党首の座に就いた。
原題:Merz Loses Initial Vote to Be German Chancellor in Shock Setback、Merz to Make New Bid Tuesday to Secure German Lawmaker Backing、Merz Secures Lawmaker Backing as German Chancellor in Second Try(抜粋)