銀行寄りのボウマン氏、FRB副議長の席に最短距離-独立性守れるか
Katanga Johnson、Catarina Saraiva-
オフィスに赤い野球帽、テレビのチャンネルはFOXニュース
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地銀にルーツ、前任者が進めてきた銀行規制のまき直しに積極姿勢
米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は、オフィスに帽子を置いている。「Make Community Banks Great Again(コミュニティーバンクを再び偉大に)」と書かれた野球帽は赤い色だ。オフィスのテレビはチャンネルをFOXニュースに合わせている。同理事は自分を「ミキ」と呼んでほしいと述べ、親しみやすさをアピールする。
ボウマン氏は近く、FRB副議長(銀行監督担当)に昇格する見通しとなっている。上院銀行委員会はすでに党派に沿った投票で指名を承認した。共和党が過半数を占める上院本会議は、早ければ4日にも指名を承認する可能性がある。銀行業界は資本規制案の巻き戻しを求めるボウマン氏の姿勢を評価。一方で銀行寄りの姿勢が行き過ぎているとして、FRBの独立性を損なうなどとの批判もある。
同氏がこの職に就く見通しとなったのは、前任のマイケル・バー氏(現理事)が2026年までの任期を残して突然退任したためだ。ボウマン氏は、直ちに就任への意欲を示し、2018年に彼女をFRB理事に推した州の銀行監督官らに連絡を取った。彼らにベッセント財務長官に働きかけるよう依頼したと、事情を知る複数の関係者が非公開情報であることを理由に、匿名で明らかにした。
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「FRBでの7年間で多くを見てきた」とボウマン氏(54)は話し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による経済の停止と再開を例に挙げる。ハワイで生まれ、幼少期をドイツで過ごし、英国での勤務経験もある同氏は、カンザス州カウンシルグローブという小さな街が自分のルーツだという。高祖父が1882年創業に関与したファーマーズ&ドローバーズ銀行で勤務後、2017年にカンザス州銀行監督官になった。弁護士としてワシントンの米下院委員会や国土安全保障省などで働いた経験を経て、FRBに入った。

ボウマン氏はバー氏が提案した資本要件引き上げにしばしば反対してきた。ジョージ・ワシントン大学法科大学院のアーサー・ウィルマース名誉教授は「ボウマン理事について最も懸念しているのは、彼女の公に述べた立場と、大手銀行が資本要件の引き下げや監督の緩和を求める要望リストとの間に違いが見られないことだ」と述べた。ボウマン氏が他のFRBメンバーとの協調を優先すれば、それは変わる可能性もあるという。
ボウマン氏は規制の効果で銀行はすでに強固になっているとし、「銀行システムの強固さと安全性、健全性は大きく改善した」と述べている。
金融政策において、ボウマン氏は他のメンバーよりタカ派的とされる。昨年9月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げに反対票を投じた。ボウマン氏はスタッフに対する厳しい姿勢で知られ、匿名の関係者によれば、同氏への説明を担当するスタッフは上級の職員や理事が担う新たな慣習が生まれたほどだ。
意見の対立を隠さないことでも同氏は知られている。2023年のシリコンバレー銀行破綻後、バー副議長による調査が不十分だとして、監督の不備に対する第三者調査の実施を主張した。コロナ禍当時は220人余りの地方銀行最高経営責任者(CEO)らと直接電話で話し、精力的に活動した。最近ではバーゼル最終合意や長期債務規制案に反対の姿勢を鮮明にしているほか、ストレステストの透明性向上や、補完的レバレッジ比率(SLR)のルール改正に積極的な姿勢だ。
トランプ政権が政府機関の人員を劇的に減らす中、ボウマン氏はFRBの監督官や検査官を維持したい考えだ。「銀行システムの安全性と安定、健全性の監督責任を遂行する上で最も重要だ」と5月に議会公聴会で証言。「もし私の指名が承認され、監督および規制部門の見直しを行うことになれば、銀行規制の責任を完全かつ効果的に実施できるようにする必要性を非常に重視するだろう」と述べた。
原題:Trump’s Pick for Fed’s Top Bank Cop Has Industry on Her Side (1)(抜粋)