トランプ税制法案、次のハードルは債券市場-長期金利が発する警告
Gregory Korte、Liz Capo McCormick、Nancy Cook-
米下院はトランプ税制法案を僅差で可決、上院に送付
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米30年債利回りは5%上回る-財政政策への不安反映
トランプ米大統領は、共和党内の激しい対立を乗り越え、「一つの大きく美しい法案」と名付けた大型税制・歳出法案の下院可決にこぎつけた。
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支持基盤の弱い激戦州出身の議員と歩み寄り、保守強硬派による造反も土壇場で回避した格好だ。しかし、この法案を上院で通過させるには、さらに厳しい要求を突きつける相手に向き合わざるを得ない。膨張する米国債を購入する投資家だ。
米30年債利回りは21日、再び5%を上回った。投資家はトランプ氏の財政運営に対して厳しい現実を突きつけた格好だ。先週にはムーディーズ・レーティングスが、財政赤字拡大などを理由に米国の信用格付けを最上位から引き下げた。ムーディーズは連邦政府の債務が10年以内に国内総生産(GDP)の約134%にまで膨らむと予想している。
これは、トランプ氏が3月の議会演説で掲げた「近い将来の均衡予算」とは大きくかけ離れる。下院で可決された法案には、チップ収入非課税化など、主要なトランプ支持層を意識した新たな減税措置が多数盛り込まれた。
ベッセント財務長官ら政権幹部は、この法案が企業のセンチメントを押し上げ、支出や投資の活性化につながると主張している。トランプ氏に近い議員らも同法案を共和党の立法課題の中核と位置づけており、トランプ氏の場当たり的な関税政策がもたらす不透明感を和らげる役割を担うと見込んでいる。
しかし、債券市場の見方は異なる。

BTGパクチュアル・アセット・マネジメントのマネジングパートナー、ジョン・ファス氏は「人々はうんざりし始めている。ワシントンには大人がいないことは明らかだ。説明責任もまったく果たされていない」と指摘。「だとすれば何が事態を動かすことになるだろうか。それは金融市場の動きだ」と語った。
その動きはすでに表れている。トランプ氏が税制法案への支持を下院議員に迫っていた21日には20年債入札で需要が振るわず、国債相場は軒並み下落。米国の財政見通しに対する投資家の懸念が強まる中、この日は米国債だけでなく株式市場も下落した。
こうした動きは、先月にトランプ氏が債券市場と対峙し、最終的には譲歩を迫られた局面を思い起こさせる。トランプ氏が上乗せ関税措置を発表すると米国債利回りは急上昇し、株価低迷には動じなかったトランプ氏も債券市場の反応には目を向けざるを得なかった。
トランプ氏は上乗せ関税の一時停止を発表した際、「債券市場は非常に厄介だ」と述べ、「人々が少し不安になっている様子が見られた」と語っていた。
当時とは異なり、今回はトランプ氏がホワイトハウスで税制法案を交渉していた際、その傍らにベッセント財務長官の姿はなかった。ベッセント氏は現在、カナダで主要7カ国(G7)財務相会合に臨んでいる。債券市場が警戒シグナルを発した際、関税の一時停止をトランプ氏に助言したのがヘッジファンド出身のベッセント氏だった。
そのベッセント氏は先月、米国債下落について、一部の市場参加者によるレバレッジ解消の影響だとして深刻視しない姿勢を示していた。直近の市場の動きについて、ベッセント氏からの発言は22日午前の時点で出されていない。

原題:Trump’s Next Hurdle: The Bond Market Hates His ‘Beautiful Bill’(抜粋)