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中東緊迫でリスク回避、イスラエル・イラン軍事衝突で揺れる市場

  • 週明けの市場、投資家の関心は地政学リスクに集中へ
  • 両国の軍事衝突3日目、かつてないほど深刻な局面に
Israeli rescuers search through the rubble at the site of an overnight Iranian missile strike in Bat Yam on June 15, 2025.
Israeli rescuers search through the rubble at the site of an overnight Iranian missile strike in Bat Yam on June 15, 2025. Photographer: Menahem Kahana/AFP

イスラエルとイランによる攻撃の応酬は激化の一途をたどっており、週明けの投資家の関心は地政学リスクに集中しそうだ。両国の軍事衝突は3日目に入り、長年にわたる敵対関係の中でも、かつてないほど深刻な局面に発展しつつある。

  これまでのところ、最も大きく反応したのは原油相場。世界の原油生産の3分の1を担う中東地域で戦争が拡大するとの懸念から、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は13日に7%余り値上がりし、2022年3月以来最大の上げを記録した。伝統的な安全資産である金やドルも上昇した。

Oil Markets in Focus | Middle Eastern conflict sparks crude-price surges
 
 

  一部の投資家の間では、過去にも両国間の対立が緩和に向かった経緯を念頭に、今回の緊張がどの程度続くかを見極める姿勢も見られる。ただ、今回の衝突は長期化の様相を呈しており、リスク資産には重しとなる公算が大きい。13日のMSCIワールド指数は4月以来の大幅安を記録した。

  ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は「深刻なエスカレーションで両国はもはや戦争状態にある」と指摘。「影響はより広範かつ長期に及ぶだろう」とし、とりわけ最近上昇していた株式市場では軟調な展開が予想されると述べた。

  中東の株式市場では15日、主要指数が軒並み下落。エジプトの株価指数は13カ月ぶりの大幅安となり、サウジアラビアの株価指数は日中に2023年10月以来の安値を付けた。

  市場参加者は新たな地政学リスクの高まりに直面する中で、トランプ米大統領による新たな関税導入の可能性、ロシアとウクライナの戦争、さらに米国内での抗議活動に伴う政治的緊張の高まりにも対応を迫られている。

  ラウンドヒル・インベストメンツのデーブ・マッツァ最高経営責任者(CEO)は、「原油価格が高止まりしてインフレを再加速させない限り、今回の動きはパニックというより一時的な調整とみられる」と分析。「相場の下落は買いの好機となる可能性があるが、直近の安値から急反発した後だけに、ここからの上値は重くなりそうだ」と語った。

  週明けの市場に関するストラテジストやアナリストのコメントは以下の通り。

◎ドイツ銀行の外国為替戦略グローバル責任者、ジョージ・サラベロス氏:

イランの原油供給が完全に停止し、ホルムズ海峡が閉鎖されるという最も悲観的なシナリオでは、原油価格はバレルあたり120ドル超に上昇する可能性がある。より抑制的なシナリオとして、イランの原油輸出が50%減少しても地域全体への影響が広がらない場合、原油価格の上昇は現行水準付近にとどまるとみられる。市場が現在織り込んでいるシナリオは後者であることが示唆される。

◎バンク・J・サフラ・サラシンの株式ストラテジスト、ウォルフ・フォンロートベルク氏:

市場は長期にわたる不確実性の局面に備えるべきだ。この紛争は今後さらに続く可能性が高く、リスクは下方向に傾いている。エネルギー市場へのエクスポージャーを通じて原油供給網の混乱リスクをヘッジすることや、金への投資を増やすことが、中東情勢のさらなる悪化に対してポートフォリオを守る最良の手段だ。金は構造的な上昇トレンドが加速する可能性がある。

◎テリマーのストラテジスト、ハスナイン・マリク氏:

原油価格の急騰は、イランの輸出が停止するリスクを反映したもので、世界の原油の20%が通過するホルムズ海峡の深刻な供給遮断を織り込んだものではない。ただし東欧市場の例が示すように、紛争が他地域に波及しないという兆しが見られれば、市場はかなり早く回復する可能性がある。

◎フロンティア・ロードの創業者、マーティン・ベルチェ氏:

不安定さは今後も続くだろう。地政学的リスクはまだ十分に織り込まれていない。今週末には事態が一段と深刻化しており、市場は下方向に反応する可能性が高いだろう。ただ、不確実性が続くのは明らかであり、市場がどの方向に進むかは予測できない。

◎グループ・リシュリューのアレクサンドル・エゼズ氏:

下落基調にあった原油価格は各国中銀が利下げに動く余地を生んできた。しかし今や、原油が経済にとって重大な波乱要因となり、以前は想定外とされていたスタグフレーションを招くリスクが浮上している。

◎サクソバンク・フランスのセールス・トレーディング責任者、アンドレア・トゥエニ氏:

株式市場に限って言えば、今回の衝突が相場の潮目を変える決定的な要因だとは考えていない。紛争はなお局地的な範囲にとどまっており、主な影響は原油市場に集中している。イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性は低いとみられるが、仮にそうなれば、事態は一変するだろう。米国が直接関与する場合も同様だが、現段階でその公算は小さい。ただ当然ながら、17日の市場が好調な滑り出しとなる展開は想定しにくい。

◎アクサ・インベストメント・マネジャーズの欧州株責任者、ジル・ギブー氏:

これは株式の利益確定売りをさらに誘発する可能性のある材料だ。株式相場は最近大きく上昇していた。特に米国では景気が減速し、1株当たり利益(EPS)の成長期待が低い中でも急伸していた。市場にとって追い風と呼べる要素はほとんど見当たらない。セクター別では、最近出遅れていた石油メジャーへの需要が高まりそうだ。原油価格の急騰は旅行分野の流れを変えつつある。

原題:Mounting Israel-Iran Conflict Amps Up Geopolitical Market Risks(抜粋)

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