トランプ氏、英国との貿易協定合意を発表-詳細は交渉継続
Josh Wingrove、Hadriana Lowenkron、Alex Morales、Jennifer A Dlouhy-
関税10%、英自動車10万台に適用-ボーイング機を英航空会社が購入
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今後の貿易協定占う手掛かりに-対中関税引き下げも「あり得る」
トランプ米大統領は8日、米国と英国が貿易枠組みで合意したと発表した。上乗せ関税の発表後、米国が貿易協定で合意するのは英国が初めて。トランプ氏は米国産品への障壁を下げ、英市場へのアクセスを拡大する「突破口」になると成果を強調した。
トランプ氏は、ホワイトハウスでの記者会見で「英国と進歩的な貿易合意に達することができ、うれしく思う」と述べた。同氏によると、協定の詳細については、今後「数週間」にわたり、引き続き交渉が行われる。
ただ、この合意に基づき、英国は米国からの輸入品の税関手続きを迅速化し、農業、化学、エネルギー、工業製品の輸出に関する障壁を削減することとなる。
トランプ氏は「この協定で、米国の輸出品の市場アクセスが数十億ドル拡大する。特に農業分野は、米国の牛肉、エタノールなど、優れた米国農家が生産するほぼすべての製品のアクセスが、劇的に拡大する」と述べた。
トランプ氏は数十カ国・地域への上乗せ関税を発表後、貿易協定交渉のために発動を一時的に停止している。

英国のスターマー首相も電話で記者会見に参加し、「これは英米間の貿易を促進し、雇用を保護するだけでなく創出し、市場アクセスを拡大することになる」と述べた。
両国の合意は金融市場に慎重ながらも楽観的なムードをもたらし、株式相場は上昇、債券相場は下落した。S&P500株価指数は一時1.5%上昇した。外国為替市場では円相場が対ドルで下げを拡大し、145円台半ばをつけた。

モデルケース
英国との協定は、米国と他の経済圏との将来的な合意のあり方を示す手がかりとなる可能性がある。ラトニック米商務長官によると、この合意は範囲が限定的で、10%の基準関税は維持される。
合意に基づき、英自動車メーカーは米国に10%の関税で、10万台の自動車を輸出できる。トランプ氏が輸入自動車に課した25%の税率よりも低い。ラトニック氏は「英国の自動車業界にとって、これは数万人の雇用に相当する」と記者団に述べた。
英ロールス・ロイス・ホールディングスのエンジンと航空機部品は、関税なしで米国市場に輸出可能となる。一方、英国の航空会社が、米ボーイングから100億ドル(約1兆4500億円)相当の航空機を購入するという。ラトニック氏は、航空会社の具体名は明かさなかった。

世論調査で経済政策への支持率が低下する中、トランプ氏は100年ぶりの最高水準に引き上げた関税計画からの脱却を図っている。トランプ氏は、上乗せ関税の90日間の猶予期間内に、他の国々にも早期に合意するよう迫っている。
交渉期間
緊密なパートナー関係にある米英でも、今回の合意に至るまでには相当の時間がかかった。トランプ政権が優先課題としている日本、インド、イスラエル、韓国などとの合意形成も容易ではないとみられる。
米国と各国との貿易交渉の多くは、総じて大枠での合意にとどまっている。包括的な貿易協定に通常含まれるはずの詳細は、後で交渉することになる。
英国は、最大の貿易相手国である米国との関係において、従来よりも経済的に不利な立場に置かれる可能性がなお高い。スターマー氏にとっては、国内で野党勢力などから攻撃材料にされる恐れがある。
対中
トランプ氏は、今週末に開始する中国との貿易交渉についても、「中身のあるものになると思う」と述べ、目に見える進展が得られるとの見通しを示した。中国側に譲歩する意向があると予測し、大きく前進すれば、同国への関税引き下げを検討する可能性もあるという。
関税引き下げの可能性について問われると、トランプ氏は「あり得る」と答えた。「様子を見るつもりだ。現在は145%で、これ以上は上がりようがない。従って、下がるのは確かだ。われわれは非常に良好な関係を築けると思う」と語った。
原題:Trump Announces Framework With UK, Lowering Trade Barriers (3)、Trump Says ‘Substantive’ China Talks Could Yield Tariff Cut (1)(抜粋)