ドイツ、防衛・インフラ支出案は18日採決-合意まだ遠いと関係者
Kamil Kowalcze、Michael Nienaber-
新議会発足前の憲法改正狙うメルツ氏、緑の党の支持依然確保できず
-
支出案不成立ならメルツ氏の指導力に疑問、連立交渉も難航へ
ドイツの次期首相就任が有力視されるメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首が、巨額の支出計画を早急に成立させようとしていることを巡り、批判の矢面に立たされている。
メルツ氏は13日の連邦議会で、「北大西洋条約機構(NATO)、欧州、世界の実動的なパートナーとして国際的な舞台に戻る必要がある」と主張。「軍事的な定義に『抑制力』という言葉を速やかに付与しなければならない。いかなる遅れも無責任になる」と述べた。
だが、総選挙から新議会発足までの間に現議会が招集されたのは100年ぶりで、間隙を突くような形で大型の財政パッケージを強引に通そうとするメルツ氏の手法に、各会派から批判が続出。メルツ氏としては、現議会の数的な利点を活用して憲法を改正し、軍事支出に対する借り入れ制限緩和と、5000億ユーロ(約80兆円)規模のインフラ基金設立を実現させたい思惑がある。

新議会では極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」や反資本主義の「左派党」の議席数が増えるため、憲法改正に必要な3分の2の議員の支持確保はいっそう難しくなる。
メルツ氏の支出計画に対する最終的な議会票決は、新議会招集のちょうど1週間前に当たる18日に設定された。それまでに同氏が必要な数の議員の支持を確保できるかは、依然として明らかではない。13日の審議終了後に法案は委員会に送付され、支持取り付けのための協議が水面下で続く。
法案可決の鍵を握るのは環境政党・緑の党(90年連合・緑の党)で、メルツ氏率いるCDUの連合や、次期連立政権に加わることが予想される社会民主党(SPD)が賛成に回るよう説得に当たっている。緑の党はメルツ氏の当初案を選挙公約を果たすことが目的の金策として拒否し、防衛の定義を拡大する代わりに使途を防衛に厳格に制限するなどの変更を法案に加えるよう求めている。
非公開の協議内容だとして匿名を要請した関係者によると、緑の党とメルツ氏側は防衛支出について歩み寄りがあったものの、インフラ基金を巡って合意にはまだほど遠い。
13日の議会では、メルツ氏が緑の党に対し、「これまで提案した以上の、何を望んでいるというのか」と問い掛け、議場に抗議の大きな声が続く場面もあった。
この支出計画を成立できなければ、メルツ氏の指導力に対する疑問が浮上し、連立交渉も難しくなることは必至だ。ドイツ経済は2年連続でマイナス成長に落ち込み、ロシア抑止のため再軍備を進める必要性とトランプ政権が仕掛ける貿易戦争にさらされている。
AfDのワイデル共同代表はメルツ氏に「国のためになる」ことをし、首相になるという取り組みを放棄するよう主張した。
原題:Merz Defends German Spending Plan as Crunch Vote Approaches (1)