英中銀、政策金利を4.25%に引き下げ-投票は3通りに割れる
Philip Aldrick-
5人が0.25ポイント、2人が0.5ポイントを支持-2人は据え置き
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世界の経済不安定踏まえ「緩やかで慎重な」金融緩和の方針維持へ
イングランド銀行(英中央銀行)は8日、政策金利を4.25%に引き下げると発表した。
トランプ米大統領による世界的な貿易戦争が英経済の重しとなっていることに対応した。ただ、今後の政策緩和は慎重にしか進めず、貿易戦争が及ぼす成長へのリスクで従来の方針を変えるには至っていないことを示唆。より積極的な緩和を見込んでいた市場の意表を突いた。
金融政策委員会(MPC)の票は3通りに割れた。MPCメンバー5人が0.25ポイントの利下げを支持、2人はより大幅な0.5ポイントの利下げを主張した。残りの2人は金利据え置きを支持した。
中銀はトランプ氏の関税措置による世界的な経済不安定を踏まえ、「緩やかで慎重な」金融緩和の方針を維持すると表明した。

ベイリー総裁は声明で「インフレ圧力の継続的な緩和により、今回は再び利下げが可能になった」と説明。
「ここ数週間は、世界経済がどれほど予測不可能になり得るかが如実に示された。だからこそ、われわれは段階的かつ慎重なアプローチを堅持する必要がある」と強調した。
決定は予想以上にタカ派的だったとの受け止めが広がり、ポンドは対ユーロで上昇。市場では追加利下げ観測が後退した。英国債は反落し、10年物利回りは5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.51%となった。
短期金融市場が見込む6月の英中銀利下げの確率は、発表前の50%前後から約20%に低下した。年内に予想される追加利下げの回数は2回と3回で割れている。
全ての会合がライブ
政策決定発表後にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じたベイリー総裁は、6月の利下げ可能性をほぼ排除した市場は正しいかとの質問に、「現時点で自信を持って言えるのは、今後6週間かそのくらいの期間に多くのことが起こるだろうということだけだ。全ての会合に自分は極めてオープンな姿勢で、全ての会合がライブだ」と語った。
6月会合の時期までには、賃金の妥結を含む国内外の動向についてより多くの情報が得られていると、ベイリー氏は指摘。金利見通しに関して、「どれほど速くとか、どの程度の規模だとかを予測はしない」と述べた。
一部でささやかれるターミナルレートは3.5%との見方には、「現在のような不確実な状況でターミナルレートを判断するのは、率直に言って極めて勇敢な行為だと思う」と語った。
英中銀の政策決定は通常、発表の前日に投票が行われる。7日に投票が行われた数時間後に、トランプ氏が主要国の一つとの通商合意が近いと発言。英国との合意だと報じられた。
合意の可能性が浮上しているにもかかわらず、英国にとって最大のリスクは、米国の関税がもたらす世界的影響だとの見解を中銀は強調した。
コスト上昇と不確実性の増大が、今後3年間で英国の成長率を0.3ポイント押し下げ、2年間でインフレ率を0.2ポイント低下させると予測した。

MPCの分裂は、米国の通商政策が引き起こす混乱の大きさを浮き彫りにする。
外部委員のディングラ氏とテイラー氏は0.5ポイント利下げを主張。「エネルギーと通商政策に関する世界的な動向が、世界経済の成長と輸出価格に下振れリスクをもたらしている」と論じた。
一方、チーフエコノミストのピル氏と外部委員のマン氏は金利据え置きを主張。3月以降、金融市場の借り入れコストが40bp低下するなど、金融環境が緩やかになっていることなどを理由に挙げた。
英国の構造的な供給制約によるインフレ持続リスクにも懸念を示した。
金融政策報告に盛り込まれた経済見通しは、年末までに3回の追加利下げが行われ、金利が3.5%に達するという市場の予測を事実上追認している。この金利見通しに基づくと、インフレ率は2027年1-3月(第1四半期)に目標の2%に達する。
中銀は、利下げ後も依然として金融政策が成長とインフレを抑制する方向に作用するとの認識を示した。成長に対するリスクは「やや下向き」である一方で、インフレに対するリスクは「両方向」だとし、MPCは「高まる不確実性に対して敏感であり続ける」と表明した。
今回発表した経済見通しで、中銀は今年の国内総生産(GDP)成長率予想を従来の0.7%から1%に引き上げた。一方、26年は1.5%から1.25%に下方修正。27年の見通しは据え置いた。
原題:Bank of England Sticks to Cautious Path Despite Trade Turmoil、BOE’s Bailey Says He’s ‘Open Minded’ About June Rates Meeting(抜粋)