ウォール街、高リスク株への傾斜強まる-「乗り遅れ」に焦る弱気派
Esha Dey、Matthew Griffin-
S&P500が過去最高値に迫るなか、投資家は高ボラ銘柄に資金投入
-
個人投資家、大型ハイテク株などモメンタム銘柄を好む傾向鮮明に

Traders work on the floor of the New York Stock Exchange.
Photographer: Michael Nagle/BloombergS&P500種株価指数が過去最高値に迫るなか、投資家はリスクを顧みず、投機的かつボラティリティーの高い領域に資金を投じている。
しかし、リスクは依然としてくすぶっている。トランプ米大統領による関税の一時停止措置は2週間後に期限を迎え、景気減速や消費者マインドの悪化を示す兆候も増えている。中東情勢もなお不安定で、戦火の再燃リスクは払拭されていない。
関連記事:イランのハメネイ師、米国「何も得られなかった」-停戦後初の声明
ウォール街のストラテジストは、不測の事態にも耐えうる健全な財務基盤を持つ企業の株式を選好するよう広く呼びかけている。ただ、投資家はそうした助言に耳を貸していないようだ。
値動きの大きい銘柄で構成される上場投資信託(ETF)の「インベスコS&P500ハイ・ベータETF」は、同社の低ボラティリティーETFとの比較で、2020年以来の良好な四半期パフォーマンスを記録する勢いだ。またゴールドマン・サックスが算出する財務基盤の弱い企業の株価指数は、S&P500種との相対比較で、昨年9月以来となる月間ベースでの高パフォーマンスを記録する見通しとなっている。

エバコアISIの株式・クオンツ担当チーフストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏は足元の相場状況について、「構造的な強気相場の終盤に必ず生じる『FOMO(乗り遅れ恐怖症)』の初期段階にある」と指摘。「驚くのは、わずか2カ月前には記録的な弱気ムードが広がっていたにもかかわらず、投機的な動きがこれほどの速さで広がっていることだ。しかも、依然として経済や政策の不確実性が大きい中でだ」と語った。
鍵を握っているのは、大型ハイテク株や投機色の強い銘柄など、モメンタム株を好む傾向がある個人投資家だ。4月初旬、S&P500種が弱気相場入りの瀬戸際にあり、関税ショックで市場が大きく動揺する中でも、機関投資家が売りを進める一方で、個人投資家は買いを継続していた。
押し目買いが奏功
マーフィー&シルベスト・ウェルス・マネジメントのシニアウェルスマネジャー、ポール・ノルテ氏は「コロナ禍の時期など、これまで市場が経験してきた下落局面を振り返ってみよう。相場が短期間に下落するたび、投資家は『押し目を買え、そして高ベータ株を買え』という教訓を学んできた」と語った。
過去2年間、市場を牽引してきたのは大型ハイテク銘柄だった。中国の人工知能(AI)スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)の台頭で優勢性が揺らぐとの懸念が浮上し、主役の座から後退する場面もあったが、S&P500種が急速に回復する中で再び主導権を取り戻している。
トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズの共同最高投資責任者(CIO)、キース・ラーナー氏は「関税問題がある程度沈静化したことで、投資家は再び支配的なテーマであるAIに回帰した」とみている。
テクノロジー企業の強さは、指数全体の利益成長も牽引している。S&P500種採用企業の今年の利益は前年比約6%の増加が見込まれているが、情報技術(IT)セクターは約21%の増益が予想されており、他セクターを大きく上回る伸びとなる見通しだ。
「企業利益に不透明感が漂うなか、投資家はより構造的な成長テーマを持つ分野に資金を振り向けている」と、トゥルイストのラーナー氏は述べた。
原題:Wall Street Goes All-In on Risky Stocks as Bears Race for Cover(抜粋)