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日本と台湾の生保、巨額の含み損に直面-トランプ関税が市場翻弄

  • 日台の保険会社、為替と利回りという2つの市場リスクに常に対処
  • 日本の生保、次にどう対応すべきかについて意見が割れている
The exchange rate of the Taiwan dollar against various currencies displayed at a currency exchange in Taipei, Taiwan, on Tuesday, May 6, 2025. The Taiwan dollar surged as much as 4.8% on Monday, fueled by concerns over the US dollar’s outlook and speculation that Taiwan may let its currency gain as it seeks a trade deal with the US.
The exchange rate of the Taiwan dollar against various currencies displayed at a currency exchange in Taipei, Taiwan, on Tuesday, May 6, 2025. The Taiwan dollar surged as much as 4.8% on Monday, fueled by concerns over the US dollar’s outlook and speculation that Taiwan may let its currency gain as it seeks a trade deal with the US. Photographer: An Rong Xu/Bloomberg

日本と台湾の生命保険会社が、数十億ドル規模の含み損に直面している。トランプ米大統領の政策がもたらした市場の混乱で打撃を被った。

  台湾では急激な台湾ドル上昇が、保険会社が保有する23兆台湾ドル(約111兆円)の外国資産を圧迫。日本では超長期国債の利回りが数十年ぶりの高水準に急上昇し、その影響が保険各社に及んでいる。

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、スティーブン・ラム氏は「日本と台湾の保険会社は、為替と利回りという2つの市場リスクに常に対処してきた。他の地域の保険会社はそうした負担が小さい」と指摘した。

  ゴールドマン・サックス・グループは台湾の保険会社だけで約180億米ドル(約2兆6000億円)の含み損を抱えている可能性があると警告。

  潜在的な損失は生保各社に外国債投資を再考させ、為替変動に対するヘッジ活用を促す可能性がある。台湾の南山人寿保険などは資産を分散化し、柔軟性を維持すると表明している。

  台湾ドルは、今年アジアで最も値上がりした通貨の一つだ。投資家が貿易戦争の中で米ドル売りに回った。

  一方、日本の30年国債利回りは、ほぼ25年ぶりの高水準に達したが、相場の変動が激しく保険各社は様子見を余儀なくされている。超長期国債の利回り上昇は、保険会社の神経を逆なでし、30年債入札にも影響を与えている。

  マングループのアジア太平洋保険ディレクター、マックス・デイビス氏によれば、日台の保険会社は現地の公社債市場が十分に大きくないため、資産のかなりの部分を海外に投資している。

  ゴールドマンのアナリストらは8日のリポートで、台湾の生保は3月までに約7100億米ドルの外国投資を積み上げ、そのうち約28%(約2000億米ドル)は通貨スワップやフォワードといった伝統的な手段でヘッジがなされていないと説明した。

  デイビス氏によると、ヘッジのない通貨が過去に良好なリターンをもたらしたことも多かったが、最近の台湾ドル急上昇は、世界経済が変化する中で通貨の不安定さを浮き彫りにしているという。

  ゴールドマンは、台湾ドルが米ドルに対し10%上昇すると、地元の保険会社に約180億米ドルの未実現為替損失が発生し、2024年の税引前利益が吹き飛び、通貨の相場変動に備え積み上げた準備金が失われる可能性があると分析。

  また、今年および来年の通貨ヘッジコストも上昇し得るという。

もろ刃の剣

  監督当局も警戒している。台湾ドル急伸を受け、台湾の金融監督管理委員会は6日、主要保険会社の支払い能力に問題はないと確認。台湾の中央銀行も同日、資金流入が投機ではなく投資目的であることを確認するため銀行に対する検査を実施すると発表した。

  当局は保険会社がヘッジされていない通貨エクスポージャーを持つことに対して実質的にペナルティーを科すリスクベースの資本制度を導入しており、これにより通貨スワップやフォワードによるヘッジ採用が増える可能性もある。

  HSBCアセットマネジメントのニコラ・モロー最高経営責任者(CEO)は5月の金融フォーラムで、日本と台湾、韓国の保険会社からの通貨ヘッジ需要が高まっていると述べていた。

  デイビス氏は、日本の生保各社は投資資産の約25%を国際市場、主に米国の企業クレジットに投資しており、そのうち約30%の通貨エクスポージャーは歴史的にヘッジされていないと説明している。

  ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのシニア債券ストラテジスト、駱正彦氏は、22ー23年の米利上げサイクル中に日本の保険会社が外国債券ポートフォリオを大幅に売却したと話している。

  特に日本の30年・40年国債利回り上昇により含み損を抱えている生保各社が直面する課題は複雑だ。米国の関税措置は世界的な経済成長を鈍化させ、日本銀行の近い将来の利上げ見通しを後退させる。

  一方、関税はインフレを加速させる恐れもある。投資家は超長期国債を保有するにあたり、より高い利回りを要求するかもしれない。30年債の流動性の低下とボラティリティーの高まりについても懸念がある。

Japan's Long-end Government Bond Yields Surge | Investors fear rising government fiscal, military spending would worsen debt load
 
 

  次にどう対応すべきかについて、日本勢の意見は割れている。明治安田生命保などは国内債投資を減らす方針だ。

  日本生命保険の最高投資責任者(CIO)河﨑圭助執行役員は最近のインタビューで、利回り急上昇を踏まえ、利回りが低めの債券と置き換えるため、超長期の国内債を購入していると語った。

  富国生命保険と太陽生命保険、大樹生命保険、大同生命保険も、円建て債の保有を増やす計画だ。

  超長期国債の利回り上昇は保険会社にとって、もろ刃の剣(つるぎ)だ。

  保有債券を満期前に売却すれば評価損が発生する可能性がある一方で、「過去の国債投資に比べ、より高い利回りを得られる可能性がある」とデイビス氏は述べ、この点が日本の保険会社にとって好材料だとしている。

原題:Asia Insurers Facing Billions in Losses as Trump Rocks Markets (抜粋)

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