もはやドル望まない、他通貨での貿易決済希望が増加-米銀幹部が証言
Carter Johnson-
米国への輸出業者、ドルますます敬遠-ユーロや元、自国通貨希望も
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米貿易戦争が中南米やアジアの貿易圏誕生とドル離れ促す-シティ
USバンコープの為替セールス責任者、ポーラ・カミングス氏は、米国の輸入業者との会話で同じような話題を最近よく聞くようになった。これら輸入業者と取引する外国企業が、もはやドルでの支払いを望んでいないという話だ。
外国の輸出企業が代わりに求めてくるのは、ユーロや中国人民元、メキシコ・ペソ、カナダ・ドルでの決済で、乱高下が続くドルへのエクスポージャーを抑制したいと考えているのだという。
「以前は、顧客の多くはドル以外の通貨での決済に消極的で、ドルはサプライヤーにとって神聖な通貨だった」とカミングス氏は振り返り、「海外の販売業者は、今やドルでなく『われわれの通貨で支払ってくれ』という雰囲気だ」と続けた。
中東の政情不安で一時的にドルが上昇する場面もあったが、それでも年初来でブルームバーグ・ドル・スポット指数は約8%下落している。昨年10-12月(第4四半期)の7%上昇から急速に反転した格好だ。相場の急変動で価格決定が難しくなる上、収益のリスクにもなるため、ドルはますます敬遠されている。

USバンコープの顧客の中でも、こうした傾向が垣間見られる。米中西部の木材会社は今や、ドルの手持ち資金をユーロに替え、欧州から輸入する硬質木材の支払いに備える。以前は単にドルを送金するだけだったが、様変わりした。欧州のサプライヤーがユーロ払いなら2%のディスカウントを提供すると約束したことも、ユーロ決済を後押ししたという。
中国から家具や食器を輸入する別の顧客は、中国のサプライヤーと条件を再交渉し、次回の決済は人民元で行う計画だ。さらにイタリアから設備を調達する米食品会社は、ユーロでの支払いに同意した結果、40万ユーロ(約6700万円)相当の商品購入を有利な価格で行うことができたという。
トロントを拠点とするクロスボーダー決済会社、コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「こうした変化はリアルタイムでの数値化が難しいが、東アジアから中南米などの市場でユーロや人民元建ての契約を望む輸出企業が増えており、現地通貨建ての取引を希望する例すらある」と指摘した。
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シティグループのストラテジスト、ダーク・ウィラー氏とアダム・ピケット氏は最近のリポートで、ドル支配が脅かされそうな分野の一つとして貿易決済を挙げた。「恐らく米国の貿易戦争に促され、中南米やアジアで『貿易圏』の誕生が促されると当社は考えている。それが貿易決済のドル離れを加速させるだろう」と両氏は記した。
国際通貨基金(IMF)およびニューヨーク連銀による直近のデータに従うと、1999年から2019年まで毎年の平均で、米大陸全体では貿易決済のほぼ全てがドル建てだった。アジア太平洋地域ではその割合が約75%、域内貿易が主流の欧州ではドル建て輸出の比率は著しく低かった。
こうした変化が公式統計に表れるようになるのかどうか、表れるとすればいつになるのかは、まだ分からない。だが、米国への輸出業者が自国通貨での取引を求めているというのは、「ドルの評判」が影響している恐れがあると、USバンコープのカミングス氏は語った。
原題:Many Exporters No Longer Want Dollars, US Bank Executive Says(抜粋)