米国債の伝統的役割に揺らぎ、「ショック吸収」機能は期待薄-KKR
Ye Xie-
株売り局面で国債が常に買われるとは限らず、両資産の関係性崩れる
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ドルは約15%過大評価、「構造的に」弱くなるリスク-マクベイ氏
国債はもはやリスク資産に対する有効なヘッジとして機能しておらず、世界の投資家に課題をもたらし、資産分散化の模索を促していると、オルタナティブ資産運用会社KKRは指摘した。
KKRのグローバルマクロ・資産配分責任者ヘンリー・マクベイ氏は、財政赤字の拡大や粘着性のあるインフレは、株式が売られる際に国債が常に買われるとは限らないことを示唆するとリポートで指摘。両資産の伝統的な関係性が崩れつつあると論じた。
「リスクオフの局面に、国債はもはや従来型ポートフォリオにおける『ショック吸収剤』としての役割を果たしていない」と記した。
トランプ米大統領が世界貿易の再構築を目指す中、ドルが「構造的に」弱くなるリスクもあるとKKRではみている。ドルは約15%過大評価されており、1980年代以降で3番目の割高水準にあるとマクベイ氏は説明した。

トランプ政権が主要な貿易相手国に上乗せ関税を賦課した4月初旬、米国の債券・株式・ドルの同時安が発生。投資家の間では米国債が逃避先資産としての地位を失ったのではないかとの疑問が生じた。
トランプ氏が貿易摩擦の緩和に動いて以降、市場は安定を取り戻したものの、過去10年間に数兆ドルを米国資産に投じてきた外国人投資家が資金を引き揚げるのではないかとの懸念は残っている。米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは16日、米国の信用格付けを最上位から引き下げた。米国の膨張する債務と財政赤字は、世界資本の最有力投資先としての地位を揺るがしかねないとの投資家懸念を反映する格好となった。
「多くの最高投資責任者(CIO)が資産を米国から他国・地域へ移すことを検討している」とマクベイ氏は指摘。
米国の株式市場は欧州と日本、インドの市場を合わせた規模の2倍に達するため、株式投資家にとって分散化は難しい課題になると、KKRはみている。
しかし債券市場においては、米国債と他国の債券資産との相関が低下してきており、米国から離れる余地がより大きいと、マクベイ氏は分析する。
「米国債が世界の多くのポートフォリオで果たしてきた従来の役割は、今後ますます小さくなっていく」と同氏。「現実として、米政府は巨額の財政赤字と高い債務負担を抱えている。米国債は金利差とドル高の両方によって恩恵を受けてきた多くのグローバル投資家に過剰に保有されている可能性が高い」と語った。
原題:KKR Says Bonds’ Role as Portfolio ‘Shock Absorbers’ Is Eroding(抜粋)