中国バイオテク株にDeepSeek級の熱狂、年初来60%高でAIしのぐ
Sangmi Cha、Winnie Hsu、Amber Tong-
大型ライセンス契約やIPOの成功などが投資家の注目集める
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「世界の医薬品イノベーションを再編する破壊的存在」-アナリスト
中国のバイオテクノロジー株が4年間続いた低迷を脱し、アジアで有数の好調なパフォーマンスを見せている。市場では今後も上昇が続くとの見方が優勢だ。
香港のハンセン・バイオテク指数は、年初から60%超上昇。外国企業による中国製医薬品の巨額ライセンス契約2件を巡り、投資家の熱狂が広がったことが背景にある。中国企業2社が注目の新規株式公開(IPO)で株価上昇となったことも、セクターの魅力を一段と高めている。
エクソーム・アセット・マネジメントの上級投資アナリスト、リウ・イーチー氏(ニューヨーク在勤)は「中国のバイオテクノロジーは、もはや10年前のような新興市場のストーリーではなく、今や世界の医薬品イノベーションを再編する破壊的な存在になっている」と指摘。「科学的根拠は確かで、経済的な魅力があり、研究開発パイプラインも成果を出し始めている」と述べた。

中国本土に上場するバイオテクノロジー企業の株価急騰は、同国が世界的なイノベーションの中心地になりつつあることを新たに示している。同セクターの上昇率は今年、中国ハイテク株の17%を上回る。ハイテクセクターは1月のDeepSeek(ディープシーク)の画期的な人工知能(AI)アプリ発表が追い風になった。
バイオテク株上昇の主な要因は、2件の大型ライセンス契約だ。米ファイザーは5月19日、中国の三生製薬(スリー・エス・バイオ)が開発しているがん治療薬のライセンス取得に向け、過去最高となる12億5000万ドル(約1800億円)を支払うことで合意。さらに同社の株式に1億ドルを投資すると発表した。
その2週間後、米ブリストル・マイヤーズスクイブはドイツのバイオ医薬品メーカー、ビオンテックに最大115億ドルを支払い、次世代がん治療薬のライセンスを取得すると発表した。この治療薬は、ビオンテックが2023年に中国のバイオテウスからライセンスを受けたものだ。
三生製薬は283%急騰しており、ブルームバーグの世界バイオテク株指数で値上がり率トップ。抗体医薬品を開発するRemeGen(レミジェン)は多国籍製薬企業からライセンス契約の打診を受けたと発表し、270%超の上げを記録している。
「DeepSeekモーメント」
中国が製薬業界の買収(M&A)や提携を通じて世界で影響力を拡大していることも、投資家の注目を集めている。1-3月(第1四半期)だけでも、中国企業が関与したこうした取引の総額は前年の2倍となる369億ドルに達し、世界全体の675億ドルのうち半分余りを占めた。
ピクテ・ウェルス・マネジメントのアジア担当シニアエコノミスト、ドン・チェン氏(香港在勤)は、中国のバイオテク企業はいわば「自分らのDeepSeekモーメント」を迎えていると指摘。ここから一段の上値余地があるとの見方を示した。
原題:China’s Biotech Moment Ignites a 60% Stock Rally That Beats AI(抜粋)