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トランプ政権が世界一律10%の相互関税-日本24%、中国は計50%強に

更新日時
  • 基本税率10%は5日、対米黒字大きい国への上乗せ税率は9日に適用
  • 発表を受けて米主要株価指数先物など下落-米国債利回りは低下

トランプ米大統領は2日、世界の貿易相手国に対し相互関税を課すと発表し、大統領令に署名した。トランプ氏がかねて不公正だと不満を表明してきた世界の経済システムに対し、これまでで最大の攻勢を仕掛けることになる。米経済を巡り投資家は憂慮を深めた。

  トランプ氏は米国への全輸出国に基本税率10%を、対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象に上乗せ税率をそれぞれ適用すると発言。トランプ氏の発表によると、関税率は対中国が34%、欧州連合(EU)は20%、日本は24%、ベトナムは46%となる。このほか韓国は25%、インドは26%、カンボジアは49%、台湾は32%となっている。ただし、大統領令の付属書類では韓国26%、インド27%とされるなど混乱を招いた。

関連記事:日本に24%相互関税、米政権が9日適用-「極めて残念」と石破首相

President Trump Announces New Tariffs In Rose Garden Speech
各国・地域別の関税率の表示を掲げるトランプ米大統領(4月2日)
Photographer: Kent Nishimura/Bloomberg

  このうち中国の場合、合成麻薬フェンタニルの米国への流入に関して先に賦課された20%の関税と合わせると、多くの品目について税率は計50%を上回ることになる。

関連記事:米政権が対中関税54%賦課へ、中国輸出に「バズーカ砲」級の大打撃

  トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンでのイベントで、「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが今後はわれわれが繁栄する番だ」と述べた。

  今回の動きはトランプ氏の貿易戦争を劇的にエスカレートさせるもので、貿易相手国・地域から直ちに報復を受ける恐れがある。他方で、米国の力の主張や貿易不均衡の是正、米製造業の復活、地政学的な譲歩要求の手段として関税を掲げてきたトランプ氏は公約を実行に移すことになる。

  また、国家間の通商上の結びつきを促進し、武力紛争を防止する方法として貿易障壁を引き下げるという、第2次世界大戦以降数十年にわたる取り組みからの決別を意味するものでもある。

関連記事:トランプ氏の相互関税、新たな歴史刻む-米が構築した貿易体制解体へ

  複数のエコノミストは、トランプ氏の関税措置を受け、短期的には恐らく米国の物価上昇と成長鈍化、あるいはリセッション(景気後退)につながるとみている。

  トランプ氏は、2024年に計9180億ドル(約136兆円)余りに上った物品・サービス貿易赤字に関連して国家非常事態を宣言し、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき過去数世代で最も大規模な関税賦課を打ち出した。トランプ政権は、保護主義的な政策への転換によって米製造業を復活させ、新たな関税から数千億ドル規模の歳入を確保し、政府の財源を満たすことを目指している。

税率引き下げの検討示唆

  トランプ政権が最悪の違反国としている国や地域を対象とするより高い「相互」関税率は、それらの国・地域が米国産品に課している関税と非関税障壁の政府集計に基づく。トランプ氏の計画では、より高いカスタマイズされた税率に直面する国・地域は、計算された数値の約2分の1に相当する課税の対象となる。

  トランプ氏は「これは完全に相互というわけでなく、寛大な相互だ」と語り、他国が米国産品に対して設けている障壁に比べれば、今回の関税率は穏やかものだとしている。米通商代表部(USTR)は主に既存の貿易収支を基に新たな関税率を算出したと説明した。

関連記事:トランプ政権の相互関税、貿易赤字ベースに算出-非関税障壁加味せず

  ホワイトハウスのファクトシートによれば、10%の基本税率は米東部時間5日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、上乗せ税率は9日午前0時1分(同日午後1時1分)に適用される。

  トランプ氏は外国の首脳に対し「自国の関税を撤廃し、障壁を取り払い、為替操作を行わない」よう促し、他国が米国の輸出を支援する措置を講じれば、関税率の引き下げを検討する意向を示唆した。

  ベッセント米財務長官はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、他国に対し対米報復措置を思いとどまるよう呼び掛けた。

  EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「交渉が失敗に終わった場合に備え、われわれの利益や企業を守るためのさらなる対抗措置を用意している」と表明した。また、中国商務省は米関税に断固反対し、対抗措置を講じるとした上で、「一方的な関税措置を直ちに撤回し、貿易相手国・地域との相違を対等な立場での対話を通じて適切に解決する」よう米国に求めた。

  USTR次席代表を務め、現在はアジア・ソサエティー政策研究所に所属するウェンディ・カトラー氏は「特にアジア諸国が矢面に立たされているように見受けられる」とコメントした。

自動車や鉄鋼・アルミは除外

  一方、ホワイトハウスは相互関税の対象から自動車・同部品はおおむね除外されると明らかにした。米政府が先に発動を決めた輸入自動車への25%の追加関税は3日から適用開始。また、既に25%の関税賦課の対象となっている鉄鋼とアルミニウムも相互関税を適用せず、国内の輸入業者に少なくとも多少の救済の手を差し伸べる。金と銅も適用除外となる。

関連記事:トランプ米政権の25%自動車関税が発効-コスト高や供給網混乱も

  他方で、中国本土および香港からの輸入貨物のうち、申告額が800ドル未満の場合、関税が免除される「デミニミス」免税措置は5月2日に打ち切られる。トランプ政権は同措置の廃止計画を打ち出した後、実施を先送りしていた。中国のファストファッション大手SHEIN(シーイン)や同国ネット通販企業PDDホールディングスの「Temu」などに打撃となる可能性がある。

関連記事:中国・香港に適用の少額輸入免税措置、米が撤廃へ-TemuやSHEINに打撃

  トランプ氏の発表の全容が明らかになるのに伴い、米主要株価指数先物は3%余り下落。自動車メーカー株はほぼ軒並み下落し、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、ステランティス、テスラの株価は通常取引終了後の時間外取引でいずれも下げた。その後は下げ幅を圧縮している。

  アジア時間3日の取引で米10年債利回りは一時9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.05%となり、5年債利回りは11bp低下した。トランプ政権の貿易戦争が米経済に及ぼす影響を巡り懸念が高まり、安全資産として需要が膨らんだ。

  このほかニューヨークの原油先物相場は下落。米国は東海岸の需要を満たすため、欧州からの燃料輸送に依存している。また、米国は各国に原油を輸出している。

関連記事:市場を恐怖に陥れたトランプ関税、貿易戦争激化で世界経済リスク増大

  カナダとメキシコは既に麻薬密売と不法移民に関連した25%の関税を課せられているが、これらはそのまま適用され、両国は個別の関税が有効である限り、新たな関税制度の対象とはならない。トランプ氏が政権1期目に取りまとめた「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の対象品目に対する免税措置は存続する。

  カナダとメキシコに対する現行の関税が撤廃された場合、USMCAに準拠した品目は引き続き優遇措置を受けられる一方、協定の対象外の品目には12%の関税率が課されることになる。

  米ピーターソン国際経済研究所のメアリー・ラブリー上級研究員はトランプ氏の発表について、「われわれが心配していたよりもさらに悪い」ものだったと指摘。どのように実施されるかは不透明で、世界的な「貿易経路の見直しに大きな影響がある」との見解を示した。

原題:Trump Tariffs Everyone, With China and Europe Vowing RetaliationTrump Spares Automakers From More Pain in Reciprocal Tariffs (1)US Excludes Steel, Aluminum, Gold From Reciprocal Tariffs (2)US 10-Year Yield Drops Toward 4% as Tariffs Fuel Haven DemandDe Minimis Tariff Loophole That Aided Temu, Shein Ends May 2 (1)(抜粋)

(大統領令の付属書類にある韓国やインドの関税率、関税率算出方法についてのUSTRの説明、中国の反応などを追加して更新します)
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