スイスのジュリアス・ベア、不動産融資で230億円の貸倒損失-株価急落
Jan-Henrik Foerster、Noele Illien-
シグナで大打撃の後も管理不十分か、最高リスク管理責任者引退へ
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「追加的なリスク発覚見込んでいない」とCEO、6月に新戦略発表
スイスの富裕層向け資産運用会社ジュリアス・ベア・グループは、不動産開発融資に絡み再び大規模な損失を計上すると明らかにした。ステファン・ボリンジャー新最高経営責任者(CEO)が進める経営再建の取り組みに水を差す格好となる。
ジュリアス・ベアは20日遅く、プライベートデット事業と住宅ローン業務の一部持ち高に関連して1億3000万スイス・フラン(約230億円)の貸倒引当金を計上すると発表した。この発表を受け、21日のチューリヒ市場で同社株は一時7%下落した。
ブルームバーグはこれより先、ジュリアス・ベアはドイツ・ハノーバー市の不動産プロジェクトがデフォルト(債務不履行)寸前に陥っていることに鑑み、関連融資の減損処理を検討していると、関係者の話として報じた。別の不動産開発案件でも損失が発生する見込みだという。
上場する資産運用会社としてスイス2位のジュリアス・ベアは2023年終盤、オーストリアの大物実業家レネ・ベンコ氏が創業したシグナ・グループ向けの融資が焦げ付き、利益が半減。プライベートデット業務からは撤退した。
1月にCEOに就任したボリンジャー氏は同社のクレジットポートフォリオの検証を進めている。だが、新たな貸倒損失の発生は、シグナによる打撃が表面化して以降のリスク管理も十分にできていなかったという示唆になる。
ボリンジャー氏は21日、電話記者会見で「さらなる損失につながり得る追加的なリスクの発覚は見込んでいない」と述べた。最高リスク管理責任者(CRO)のオリバー・バルトレット氏は引退し、新たなコンプライアンス(法令順守)担当責任者を迎え入れて取締役会を強化すると、ジュリアス・ベアは説明した。
エビー・コスタキス最高財務責任者(CFO)は、今回の損失はシグナとは「全く関係がない」と明言し、プライベートデット資産および住宅ローン資産の一部顧客に関連していると述べた。
ボリンジャーCEOとノエル・クイン会長は6月に新たな戦略を発表し、投資家の信頼を押し上げたい考え。
原題:Julius Baer Takes $156 Million Loan Hit in New Setback for CEO(抜粋)