NATO加盟国、防衛費引き上げ「5%」目標合意-集団防衛も再確認
Andrea Palasciano-
トランプ氏「素晴らしい」会合だった-第5条への支持も表明
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国防支出のGDP比5%に-「ロシアの長期的な脅威」対応強化へ

NATO全体会議に出席した加盟国首脳ら(25日、オランダ・ハーグ)
Photographer: Lina Selg/Bloomberg北大西洋条約機構(NATO)加盟国は25日、オランダ・ハーグで開いた首脳会議で、防衛費支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる新たな目標で合意し、集団防衛へのコミットメントを再確認した。ロシアが攻撃的な姿勢を強める中で、歴史的な判断を下した。
安全保障への支出が足りないと欧州の同盟国を繰り返し非難していたトランプ米大統領にとって、NATO加盟32カ国の決定は大きな勝利だ。
ヘグセス米国防長官は5月末のシンガポールでの演説で、日本を含めたアジアの同盟国に対しても、防衛費をGDP比5%に向け増やすよう要求した。
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トランプ氏は首脳会議に向かう途上でも、NATOの根幹を成す北大西洋条約第5条が規定する集団防衛の義務を疑問視するかのような発言をしていた。だが、会議終了後には「素晴らしい」会合だったと評価し、第5条についても「支持している」と明言した。
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採択された首脳宣言では、加盟国は「集団防衛に対する揺るぎない意思を再確認」し、「10億人の市民とNATO、自由と民主主義を守るという決意において、団結し、確固たる姿勢を貫く」とうたった。
米国が欧州からの兵力撤収を検討しているとの懸念が膨らむ中で、今回の首脳会議ではNATOへのトランプ氏つなぎ留めに大きな努力が払われた。欧州のウクライナ支援国は、4年目に入ったロシアのウクライナ侵攻に、有効な対応策をなかなか打ち出せずにいる。
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国防費支出増へ
国防費の支出目標は、現在のGDP比2%から大きな上積みとなる。宣言によると、新目標は「安全保障上の深刻な脅威と挑戦、とりわけロシアが欧州と大西洋地域に及ぼす長期的な安全保障の脅威と、テロの脅威が続いていることに」対応する措置だという。
NATOのルッテ事務総長は、目標の引き上げを数カ月にわたり各国へ働き掛けていた。GDP比5%の支出目標のうち、3.5%が中核の防衛支出、残り1.5%はインフラやサイバーセキュリティーなど関連の投資とした。今回の合意により、2035年まで巨額の資金が防衛支出に向かうことになる。
ルッテ氏は、ロシアは5年以内にNATO攻撃を考えられる態勢が整うと示唆していた。

ただ、目標の引き上げを巡るあつれきも生じた。スペインのサンチェス首相は目標を拒否し、「支出は2.1%まで引き上げるが、それ以上でも以下でもない」とした。同氏は、NATOが掲げる兵器や兵力の新たな目標は達成するとしつつ、そのための費用については合意していないとし、他の加盟国からの強い批判を招いている。
トランプ氏はスペインの態度を強く非難し、報復としてスペイン製品に対する関税を2倍に引き上げる可能性を示唆した。トランプ氏は記者会見で「支払っていないのはあなただけだ。何が問題なのかわからない」と語気を強めた。
ウクライナ
今回の宣言では、ウクライナに対するNATOの支持も確認した。ただ、昨年の宣言に盛り込まれていた、ウクライナの将来はNATOにあるとの文面は削られ、同国への追加軍事支援に消極的なトランプ政権の姿勢を反映した。
NATO首脳会議に合わせ、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。同国は米国製兵器の購入を目指している。
会談後にゼレンスキー氏は、「全ての本当に重要な問題」をトランプ氏と協議したと、X(旧ツイッター)に投稿。停戦と本物の平和、ウクライナ市民の保護をどうやって成し遂げるかを話し合ったとし、「長く、本質的な会談が持てた」と説明した。
ドイツのメルツ首相は、ハーグでの首脳会談はウクライナを支持する強いシグナルを送ったと記者団に強調した。トランプ氏に対して、ロシアへの圧力を強めるよう促したと明らかにした。欧州連合(EU)は、26-27日にブリュッセルで開く首脳会議で、新たな対ロシア制裁を承認する見通しだ。