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世界経済に新たな試練、米国のイラン攻撃で再燃するインフレ懸念

  • 原油高がインフレ率の上昇を招く恐れ、各国中銀にも頭痛の種
  • ホルムズ海峡封鎖なら原油は130ドル突破-BEアナリスト

米国によるイラン核関連攻撃は世界経済が不透明感を増す中での軍事行動となった。今後の展開は、イランがどのような報復措置に出るかに左右される。

  世界銀行や経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)は、いずれも過去数カ月で世界経済の成長見通しを下方修正した。紛争の一段の激化で原油や天然ガス価格が大幅に上昇したり、貿易に混乱が生じたりすれば、世界経済の新たな重荷となる恐れがある。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のジアド・ダウド氏らアナリストは「イランがどう対応するかは今後明らかになるが、今回の攻撃は紛争のエスカレーションにつながる公算が大きい」と指摘。「紛争の拡大は世界経済にとって、原油価格の上昇リスクやインフレ圧力の強まりを意味する」とリポートに記した。

  地政学的リスクの高まりは、トランプ大統領による上乗せ関税の一時停止措置が期限切れを迎える時期とも重なる。中東での紛争が長期化すれば、最大の経済的打撃は原油価格の高騰を通じて表面化するとみられる。

  米国によるイラン攻撃後、IGマーケッツが提供する週末取引では、原油価格の変動に連動するデリバティブ商品が8.8%急伸。IGの市場アナリスト、トニー・シカモア氏は、この動きが週明けも続けば、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=80ドル前後で取引が始まる可能性があるとの見方を示した。

関連記事:中東情勢緊迫化で原油価格に急騰の気配-米国がイラン核施設を攻撃

  今後の展開は、イランの出方に大きく左右される。アラグチ外相は米国の行動について、「暴挙であり、その影響は長く残るだろう」と非難。「イランは主権、国益、国民を守るため、あらゆる選択肢を保持する」と強調した。

  BEはイランの対応として、以下の3つのシナリオを想定している。

  • 地域内の米国の人員および資産への攻撃
  • 地域のエネルギーインフラを標的にした攻撃
  • 機雷の設置などでホルムズ海峡を封鎖

  ホルムズ海峡が封鎖されるという極端なシナリオでは、原油価格は1バレル=130ドルを超える可能性があると、BEのアナリストは指摘。その場合、米国の消費者物価指数(CPI)は夏にかけて4%近くまで上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)や他の中央銀行が利下げ時期を後ろ倒しにする可能性がある。

  米国は原油の純輸出国だが、原油高となれば、すでに課題を抱える米経済にさらなる重圧となる。米連邦公開市場委員会(FOMC)が先週公表した最新の四半期予測では、当局者は今年の経済成長見通しを引き下げた一方、失業とインフレの見通しは引き上げた。

  イラン産原油の最大の輸入国である中国は、供給の混乱で最も直接的な影響を受けるとみられる。ただ、足元の戦略備蓄が一定の緩衝材として機能する可能性がある。

  ホルムズ海峡を通過する海上輸送に支障が生じれば、世界の液化天然ガス(LNG)市場にも大きな影響が及ぶことになる。

  世界のLNG取引の約2割を担うカタールはホルムズ海峡経由で輸出を行っており、実質的な代替ルートを持たない。このため、同海峡の航行に支障が出ればLNG市場は深刻な供給逼迫に陥り、欧州のガス価格が急騰する可能性があるとBEでは分析している。

  「中東情勢の緊張は、すでに弱い世界経済にさらなる打撃となる」と、オックスフォード・エコノミクスのグローバルマクロ調査ディレクター、ベン・メイ氏は指摘。「原油価格の上昇とそれに伴うインフレ率の上昇は、各国・地域中銀にとって大きな悩みの種となるだろう」と語った。

原題:US Strikes on Iran Come at Fragile Moment for the Global Economy(抜粋)

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