トランプ氏、作戦司令室で開いた会合終了-イラン巡る計画は謎のまま
Catherine Lucey-
最終決定下していないとトランプ氏、イランの核保有容認せず
-
行動は18日夜にもある可能性-西側諸国の政府関係者2人
トランプ米大統領は18日、中東情勢を巡りホワイトハウスのシチュエーションルーム(作戦司令室)で国家安全保障会議(NSC)当局者らとの会合を開いた。トランプ氏は米国がイスラエルによる対イラン軍事攻撃に加わるかどうか検討を重ねている。
ただホワイトハウスは、イラン核計画の破壊を目的とした攻撃への参加を大統領が決めたかどうかについて、ほとんど手掛かりを示していない。
トランプ氏は会合に先立ち記者団に対し、最終的な決定をまだ下していないとする一方、イラン指導部が交渉に臨む姿勢は「遅い」と非難するとともに、同国による核兵器保有を決して容認しない考えをあらためて示した。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が事情に詳しい関係者を引用して報じたところでは、トランプ氏は今週早い時期にイランを標的とした軍事攻撃計画を承認したが、イラン側が米国の要求に応じるかどうか見極めるため、最終的な承認は保留した。
トランプ氏は大統領執務室で「何をすべきかについて考えがある」と発言。「特に戦争のような状況が変わる場合には、直前になって最終判断を下したい」と述べた。
イランのアラグチ外相はSNSへの投稿で、同国として引き続き「外交にコミットしている」とし、核兵器を保有しようとしたことはなく、これからもそれを求めないと表明した。トランプ氏も過去何週間にもわたり、外交的解決が望ましいとしてきたが、イラン外相が示した方針では、トランプ氏が攻撃を思いとどまるには不十分な可能性がある。
トランプ氏は、イランが核兵器を保有するまで「あと数週間」だったと指摘した。この見解は、米国の一部の情報機関の分析よりも断定的となっている。
米国が同盟国に非公式に伝えている立場は、全般にトランプ氏の公の発言と一致しており、イランが降伏しなければ攻撃に加わると脅していると、西側諸国の政府関係者2人が明かした。これらの関係者によれば、行動は18日夜にも、今後24時間以内に実行される可能性があるという。関係者はいずれも匿名を条件に語った。
トランプ氏のあいまいな発言は、深刻化するイスラエルとイランの対立に新たな緊張を加えている。中東での米国の戦争に反対する姿勢を過去10年にわたって訴えてきた同氏は、米国がこの紛争に関与すべきかどうか支持者の間の意見対立に直面している。
パキスタン軍トップと会談
トランプ氏は18日、パキスタン軍トップのムニール元帥とワシントンで会談した。パキスタンはイランと協力的かつ複雑な関係にある。トランプ氏は会談後、「彼らはイランのことを非常によく知っており、大半の人々よりも詳しい。そして何一つ満足していない」と発言。「彼らは何が起きているかを見ている。そして彼も私に同意した」と語ったが、何を意味するのかは説明しなかった。
パキスタン側はこの会談に先立ち、中東での紛争で仲介役を果たす可能性を示唆していた。
「やるかもしれないし、やらないかもしれない」
トランプ氏は、米国とイラン当局者による会談の可能性を完全には排除していないとも語ったが、仮に軍事介入に踏み切った場合に米国の行動を正当化する理由についても繰り返し言及した。
イラン指導部について「合意を結ぶべきだった」とトランプ氏は指摘。「結局、彼らは合意を見送った。そして今になって、結んでおけばよかったと思っているはずだ」と続けた。
これに先立ち、トランプ氏はイランは核問題を巡る合意の機会を台無しにしたと発言。イランの核施設を攻撃する方針に傾いているのかと記者団に聞かれ、「やるかもしれないし、やらないかもしれない。誰も私が何をするか分からない」と述べていた。
米国とイランは数週間にわたり、核開発問題を巡って協議してきた。前週末13日にも次回会合が予定されていたが、イスラエルの攻撃を受けて中止となった経緯がある。
「継続せよ」
イスラエルのネタニヤフ首相に対しては17日の電話会談で、イランへの攻撃を続けるよう促したと明らかにしたが、米軍の攻撃参加については何ら示唆しなかったと話した。ネタニヤフ氏へのメッセージについて記者団に問われると、「『続けろ』と言った」とトランプ氏は語った。
米国は、イラン中部フォルドゥの地下核施設を破壊するのに必要な軍事力を提供できる存在だと考えられており、イスラエル単独では同施設の破壊は困難だと専門家は指摘している。
関連記事:「バンカーバスター」焦点に、トランプ大統領の対イラン戦略で選択肢
トランプ氏が17日に国家安全保障チームと会合を開催して以降、イラン問題について詳しく話したのは今回が初めて。
イランから接触
トランプ氏はまた、イラン政府から米国に接触があり、問題解決に向けてホワイトハウスでの会談の申し出があったと明らかにした。だが、イランに対しては「すでに我慢の限界だ」とも述べた。これに対し、イラン国連代表部はソーシャルメディア、X(旧ツイッター)への投稿で、トランプ氏の主張を否定した。
イランの最高指導者ハメネイ師がトランプ氏が求めた無条件降伏を拒否したことについては、「幸運を祈る」と言い放った。
またトランプ氏は、「イランが核兵器を保有してはならない」というのが譲れない一線だとの考えを改めて示した。
イランへの攻撃を実行するか否かという判断は、歴代の米大統領にとって極めて重大な地政学上の問題だ。孤立主義と伝統的保守派の介入主義という二分された支持基盤を持つトランプ氏にとっては、国内政治における火種にもなり得る。
米国のハッカビー駐イスラエル大使は18日、イスラエルに滞在する米国人の希望者を対象に、大使館が退避支援を実施していると発表した。大使館の報道官によれば、職員はすでに国外退避を開始している。
ハメネイ師は反発
これに先立ち、イランの最高指導者ハメネイ師は、トランプ大統領が呼び掛けたイスラエルに対する降伏を拒否した。
ハメネイ師は自身の公式ウェブサイトに掲載した発表文で、「イランは降伏するような国でないと米国民は理解するべきだ」と主張、「米国による軍事侵略があれば、いかなるものであろうが間違いなく回復不能な損失を負うことになる」と続けた。
関連記事:イランは降伏しない、ハメネイ師がトランプ氏の要求に反発 (2)
ただ、イランによるミサイル、ドローン攻撃が落ち着きを見せ始めたとして、イスラエル当局は一部の安全規制を緩和している。
攻撃が弱まった理由は現時点では明らかになっていない。イスラエル軍は数日前、イランのミサイル発射台の約3分の1にあたる120基を破壊し、今後の攻撃を阻止する目的で製造施設を標的にしたことを明らかにしていた。
イスラエル政府によると、イランは13日以降、弾道ミサイル400発と数百機のドローンを発射し、これまでに24人が死亡、800人以上が負傷した。16日午前から死者は報告されていない。イランの攻撃が最も激しかったのは13日から週末にかけてで、約300発のミサイルが発射された。その大半はイスラエルに迎撃された。
原題:Trump Wraps Situation Room Meeting as Iran Plan Remains Mystery、Pakistan Army Chief Discusses Israel-Iran Conflict With Trump、Trump Refuses to Reveal US Plans for Iran, Says ‘Late’ for Talks(抜粋)