三菱モルガン社長、「同意なき買収」助言引き受けも-市場環境が変化
堀内亮、布施太郎-
中規模案件の獲得も目指す、現在約100人の陣容は拡大へ-M&A助言
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超長期金利の上昇、経営環境にとって先々良い状況生むとの認識示す
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小林真社長は、M&A(企業の合併・買収)助言業務について、相手先企業の意向に反した「同意なき買収」案件でも、当事者それぞれの企業価値向上につながるようなケースであれば、引き受ける方針を示した。
小林氏は10日、ブルームバーグとのインタビューで「買い手と売り手の双方の観点から、企業価値や株主価値の向上に資するという大義が認められれば、やらせていただく」と言及した。ただ、「画一的な基準はなく、案件ごとに判断している」と述べ、内容を十分に見極めた上で慎重に対応していく考えだ。
企業価値などの経済合理性から買収提案を検討すべきだとする2023年夏の政府の行動指針を受け、同意なき買収案件は増加傾向にある。それ以前は自社の評判に配慮して関与を避ける証券会社もあった。M&A市場の主要プレーヤーである三菱モルガンの小林氏は、環境変化の中で新たな収益機会を探る姿勢を鮮明にした。

小林氏は助言業務の引き受けについて、「企業価値の向上につながるかどうかがあくまで判断材料であり、M&Aに関与するわれわれのスタンスは変わっていない」と強調。その一方で、「日本において同意なき買収に関する周囲の受け止め方が変わってきている」と指摘した。
ブルームバーグのデータによると、日本企業に関わるM&A助言ランキングで、三菱モルガンは23年度から2年連続で1位(取引金額ベース)。24年度は日本生命保険による約1兆2000億円の米系生保の買収案件や約5100億円に上る平和によるアコーディア・ゴルフの親会社買収などを手がけた。
最近の同意なき買収案件には、ニデックによる牧野フライス製作所に対するTOB(株式公開買い付け)や台湾の電子部品メーカー、ヤゲオによる芝浦電子へのTOBなどがある。これらのケースは対抗策や新たな友好的買収者(ホワイトナイト)探しに発展するなど、さまざまな場面で助言の機会も増えている。三菱モルガンはヤゲオ側を助言している。
小林氏はトランプ米大統領の関税政策の影響でM&A市場は「スローダウンはしているものの、マグマはたまっている」と指摘。助言では大型案件に加え、今後は中規模案件の獲得も目指し、現在約100人の陣容拡大を図る方針も示した。具体的人数などについては検討中と述べるにとどめた。
利上げは夏から半年程度後ろ倒しに
20年国債など超長期金利の足元での上昇については、「われわれの経営環境にとっては、先々良い状況が生まれてくる」とみている。関連して日本銀行の政策金利引き上げは、当初想定された今夏ごろから半年程度後ろ倒しになるとの見通しを示した。三菱モルガンは日本国債の落札総額でトップクラス。
小林氏は、同証が地域金融機関向けに販売していた日本国債を裏付けとする「仕組み貸し出し」を停止した理由について、「きちっとした体制をとって業務を進めてきたものの、誤解を招くような取引が起こり得ることを勘案した」と説明した。金融庁は仕組み貸し出しについて商品性にリスクがあるとして懸念を示していた。
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